こんにちは。
収穫の季節を迎え、オタワ(カナダ連邦政府)には輸出したい新たな「作物」があります。それはカーボンクレジットです。
今週号では、カナダ企業が世界に向けてカーボンクレジットを販売できるようにする連邦政府の計画を取り上げます。まだ黎明期の市場ですが、カナダのクリーン電力と地質学的優位性を輸出競争力に変える可能性を秘めています。
その他のクライメートテック関連ニュース:
- EnviCoreが素材大手CRHと提携
- Kathairosがカナダの成長企業ランキングで首位に
- 今秋注目のクライメートテックイベントのプレビュー
カナダ、国際カーボン市場への扉を開く
何が起きたか: カナダは自国のカーボン除去・排出削減プロジェクトを世界展開しようとしています。連邦政府は、パリ協定第6条のもとでカナダ企業が国際的にクレジットを販売できるようにする枠組みの計画を発表しました。
詳細: パリ協定第6条は、各国が「国際的に移転される緩和成果(ITMO)」と呼ばれるクレジットを取引することで、気候目標達成に向けて協力することを認めています。
国や企業は他国から排出削減量・除去量を購入し、自国の目標達成に充当できます。売却した国は二重計上を避けるため、その分を自国の集計から差し引きます。
狙いは、質の高い排出削減・除去が実現される場所へ投資を誘導することです。
なぜ重要か: ITMOの枠組みが整えば、カナダの「トン」が輸出可能な資産となり、より幅広い国際バイヤーに開放されます。
Carbon Removal Canadaの集計によると、建設着手を待つ発表済みの除去能力は1,100万トンに上ります。国際バイヤーへの販売が実現すれば、これらのプロジェクトの建設を後押しし、80億ドル以上の投資を引き出す可能性があります。
背景: ITMO市場はまだ薄い状態です。2025年12月時点で国家間取引はわずか2件しか完了しておらず、2030年までの累計需要はわずか7億3,400万トンにとどまっています。
第6条は大枠を定めていますが、具体的なルール作りは各国に委ねられています。つまり、どのプロジェクトタイプが対象となるか、ITMOが国内のコンプライアンス市場とどう連動するかといった難しい論点に答える必要があります。
売却側にはトレードオフもあります。安価な「トン」を輸出しすぎると、自国の目標達成には高コストの選択肢しか残らなくなります。そのため一部の国は、国内で実施するにはコストが高すぎる選択肢に限ってITMOの対象とする方針を取っています。
一筋縄ではいかない点:
- オタワはまだ検討段階です。ルール、時期、対象クレジットはいずれも未定です。
- 品質基準は自主的市場より高くなります。バイヤーは「本物で、追加性があり、検証済みで、永続的な」クレジットを求めるでしょう。
- カナダの先住民族の権利に関する宣言(UNDRIP)へのコミットメントがあるため、枠組みは先住民の同意(インディジナス・コンセント)にも対応する必要があります。
結論: カナダのカーボン除去・排出削減をより多くの国際バイヤーに開放することは、プロジェクトの立ち上げを後押しし、カナダ全体で一貫性のあるカーボン市場を形作る一助となる可能性があります。
EnviCore(アルバータ州カルガリー)は、年産20万トンの低炭素セメントプラント(業界初)を支援するため、グローバル素材企業CRHのベンチャー部門から戦略的投資を獲得しました。
Kathairosは、過去3年間で16,379%の収益成長を達成し、Globe & Mail誌の成長企業ランキングで首位に輝きました。同社は石油・ガス事業におけるメタン放出の防止を手がけています。
EverWind Fuelsは、ノバスコシア州の風力・グリーン水素プラットフォームにデータセンターを追加する構想を検討中です。
PowerCoは、次世代バッテリー技術への対応のため、セントトーマスのEVバッテリー・ギガファクトリーを2年延期しました。稼働開始は2029年の予定です。
オンタリオ州は、ピッカリング原子力発電所の寿命を38年延ばすため、4基の原子炉を停止し260億ドル規模の改修を開始しました。
Novaportは、ノバスコシア州シドニーで洋上風力産業を支える港湾建設を計画しています。
Hybrid Power Solutionsは、米空軍向けにポータブルバッテリー20台の発注を獲得しました。
フィンランドのKempowerは、バンクーバーの主要2港にEV充電設備を設置し、カナダ各地の港湾にも充電器を展開する契約を締結しました。
Deep Skyは、Salesforce向けのカーボン除去クレジット・ポートフォリオ(Milkywire運営)に選定され、ケベック州Therford Minesのプロジェクトを支援します。
THE CLIMATE CYCLE 新着エピソード
山火事を「火が出る前に」察知する:CRWN.ai
動画を見る:CRWN.aiが山火事発生前に送電線トラブルを察知する仕組み
多くの電力会社は今も50年前と同じ方法で設備の不具合を発見しています。作業員が1〜8年に一度、送電回廊を車で巡回して問題を探すというやり方です。
CRWN.aiは、重要インフラの監視ギャップを埋めることで、送電線の不具合による山火事を防ぎ、メンテナンスを最適化する手助けをしています。
今回は、CRWN.aiのBrittany Courvoisier-Nicol氏とJames Playford氏に、監視ギャップをどう埋めているか、防衛テック分野での開発経験、そして先住民の知見が西洋のデータをどう上回り得るかについて伺いました。
Apple Podcasts、Spotify、YouTubeなど、お好きなプラットフォームでお聴きください。
予算プレビュー: 財政委員会は2026年度予算への提言を公表しました。クリーンITC(投資税額控除)を2040年まで継続すること、バッテリー車サプライチェーンへの支援、一部技術への税制優遇対象拡大、クリーン燃料基金の更新などが盛り込まれています。
- カーニー政権がこれを汲み取るかは不透明ですが、下院がどの項目に注目しているかを示すシグナルと言えます。
協力してこそ: 大西洋沿岸州は、信頼性向上と地域成長を目的に、統一的な地域送電網の検討を進めています。
審査の迅速化: カーニー政権は、環境審査と労働保護の大幅見直しを目指す法案を提出しました。許認可や労働争議をめぐる投資家の予見可能性を高める狙いです。
給油所でひと息: 連邦政府は燃料税の減免措置を延長し、アルバータ州は原油価格高騰を受けて10月から州の燃料税を引き下げます。
- 一方、ノバスコシア州は来月、他州に追随してEVドライバー向けの新たな課金を導入します。
オンタリオ州、掘削へ: オンタリオ州は、市場の需要を見極めるため、地質学的炭素貯留プロジェクトへの関心表明を募集しています。同州は昨年、炭素貯留に関する規制枠組みを可決しました。
地熱発電のロードマップ策定へ: カナダ深部地熱連合(Canadian Deep Geothermal Coalition)は、カナダにおける地熱開発のロードマップ策定に向けた協議を開始しました。このプロジェクトでは、同分野が国際競争力を持つために解決すべき課題と機会を整理します。
クイックヒッツ
- トランプ氏と習近平氏の会談は、重要鉱物サプライチェーンについて合意に至らず終了
- ハリケーンはどこへ消えたのか?
- 米エネルギー省が送電網容量23GWの開放に向け19億ドルを投入
- 投資家は今年すでに米国の原子力スタートアップに46億ドルを投資
- Metaがプラスチックリサイクル企業MacroCycleと提携し排出量を相殺
- BC州の氷河3カ所が消滅の危機に
- アマゾンの森林破壊は鈍化傾向
🗓️ 今秋のクライメートテック・イベント
ニューヨーク気候週間が終わり、この秋カナダ各地で注目すべきクライメートテック関連イベントをご紹介します。
- Indigenous Clean Energy 2026 National Gathering - 10月6〜8日、トリーティ7地域
- Electricity Transformation Canada - 10月19〜21日、トロント
- Industry Connect Canada - 10月27日、トロント
- CNA West - 11月2〜4日、カルガリー
- CleanAI Summit - 11月4日、トロント
- MaRS Climate Impact - 11月17〜18日、トロント
- Scaling Up Bio Conference - 11月18〜20日、オタワ
- Converge 2026 by NorthX - 11月25日、バンクーバー
- First International Conference on Commercial Advances for Fusion Power Plants - 12月14〜17日、ケベックシティ
※ こちらの記事はClimate Tech Canadaの翻訳記事になります。